家って家族とともに年を取る。
この部屋は父が使っていた。最初は姉が、姉が結婚してから、父の部屋となった。まだ建てて17,8年だけど、そうした歴史がある。
父は私が思うよりずいぶんと几帳面な人だったのだといろんな遺品を見て思う。
それにしても、悪いことをした。
今年は忙しすぎて5月29日の命日も忘れてしまっていた…ごめんねぇ。
父のアルバムには家族の写真がたくさんあった。
若い時の母。私の成人式を祝ってくれている親戚。
旅行中の電車でまどろむ姉と私。家族で出かけた思い出。
写真には父の温かい目があった。
年を取ってからの写真はどれもこれも同じよう。
旅行が好きでいろんなところに出かけていたけれど、いつも母と一緒の写真だから、どの写真を見てもどこも変わりないように思えてくる。母だけを写した写真もたくさん。
本当に母が好きだったんだと思う。
父が死んだとき、父の免許証入れを初めて見て、私は号泣した。
その中には花嫁姿の母と付き合っていたころの若い母の写真が入っていた。照れくささを隠すように、免許証の下に入れて。。書換えの度に入れ替えてきたから、四隅がボロボロで、色もセピア色になってた。
いつも、けんかばかりしていたのに。こんなロマンチックなことをしていた父が急に愛おしく感じられた。
誰が思うだろう。
こんなおじいさんがお嫁に来てくれたときの自分のかみさんの写真を、そっと免許証入れにしのばせているなんてことを。
そのときの二人は若かった。
父はかっこいいし、母も綺麗だ。
この日の母をずっと、ずっと。何十年も。
時々見ていた、父。
私は思った。
私も、こんな風に愛されたい、と。
姉と父は光の世界で何を話しているんだろう。
家族写真は、もう、撮れない。
人の生って、なんて、はかないものなんだろう。
地球が生きてきた長さからすれば、私たちの生は、ほんの一瞬。
まばたきと同じ。
はかない。はかないけど、でも、意味がある。
意味があるから、生まれてきた。
意味があるから、光の世界へまた戻る。
誰かを愛し、誰かと出会って、別れる。それはこの肉体がある世界でのこと。
魂は永遠。
愛しあう二人の子供に生まれたこと。愛情深く育ててくれたことに感謝する。
七五三。
命ははかない、なんて考えもしなかった可愛い頃の私。
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